高感度圧電センサーによる脈拍測定技術のご紹介

1. 技術開発の背景

近年急速な進歩を遂げている自動運転技術において運転手の状態を監視するヒューマンセンシングは必須の技術となってきており、様々な方法で技術開発が進められています。その中でも脈拍間隔変動から情報を得る方法は広く知られた手法です。人間の脈拍は交感神経・副交感神経の働きなどにより常に変動しており、脈拍間隔の変動からストレス、疲れ、眠気などの様々な生理現象の指標を得ることができます。 脈拍間隔の測定技術は心臓の動きを電気的に測定する心電計を使用する方法や、腕時計型のデバイスを用い光学的に血液の脈流の変化を計測する技術などがあります。しかしこれらの測定方法はデバイスを運転手が装着しなければならず、日常的な運用には不向きです。 本開発では車両内のシート座面に敷いたピエゾフィルムセンサからの出力から運転手の脈拍を測定することにより、非装着で常用可能なセンシング技術を確立することを目的としています。この測定方法の難しい点は測定対象(脈動)に対し、ノイズ(車の振動や体動)が非常に大きいことですが、その問題を解決するためにAI(機械学習)を用いて開発を進めています。

2. 開発手法

前述の通り本開発は機械学習を用いて、ピエゾフィルムによる脈拍測定アルゴリズム開発をおこなっています。機械学習をおこなうためには実際の測定対象データの他に学習を行う上でのお手本となる教師データと呼ばれるデータが必要になります。今回は教師データとして心電計を使用し、ピエゾフィルムのデータと同時サンプリングを行い、その2種類のデータをもとに機械学習を行わせています。

Fig.1 機械学習過程イメージ

機械学習過程


機械学習が完了すると、学習済みモデルと呼ばれる学習結果が出力されます。この学習結果にピエゾフィルムのデータを入力すると、この学習済みモデルにより推論された脈拍データが出力されます。

Fig.2 学習結果(学習済みモデル)仕様イメージ

機械学習過程


開発を進める上では学習するデータの変更・追加や学習パラメータの変更などを繰り返し行いながら、推論精度の評価を行い、より精度の高い学習済みモデルを生成していきます。
実際に作成した学習済みモデルにピエゾフィルムのデータを入力して推論させた脈拍間隔のデータと心電計により測定した脈拍間隔のデータを比較したのがFig.3、Fig.4になります。共に300秒間の脈拍間隔の変動履歴ですが、Fig.3はエンジンはかけているが停車した状態でのデータで推論した結果で、Fig.4は実際に走行した時のデータで推論した結果になります。

Fig.3 アイドリング状態における心電計とピエゾフィルム出力からの推論値比較

機械学習過程

Fig.4 市街地走行における心電計とピエゾフィルム出力からの推論値比較

機械学習過程

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